PMPS・術創ケアについて・1

乳がんの手術をされた方の中には、かなりの割合で傷跡の部分や脇から胸部にかけて
あるいは二の腕や肩などに痛みや、引きつりなどを感じる方がいるようです。
これは、温存手術の方でも出る方がいるようです。

当院は女性専門鍼灸院なので、このような相談が開院当初からありました。
やはり痛む部分が乳房付近なので、なかなか男性の施術を受けにくいというのが
一番の理由です。

もう一つは、私自身の経験からPMPS(乳房切除後疼痛症候群)に限らず
「術創」(手術で出来た傷)の治療に力を入れてきたこともあると思います。

今日は、その経緯を少し書いてみたいと思います。

私は乳がんではないのですが「月経随伴性気胸」という難治性の病気で右胸の脇に数か所の術創があります。
はじめに全身麻酔をする胸腔鏡手術を1回と、その後も一時期は気胸の再発を10回以上繰り返したので
7〜8回ほど肋間から「ドレーン」という管を胸腔に入れる処置を受けました。
最終的には、肺の穴がふさがらず「自己血」を胸部に入れて癒着させるという事を2回行いました。
とりあえず、ふさがってその後は早期閉経させて再発を防いで今に至ります。

当時は、はじめの手術の抜糸も終わらないうちに、再発を繰り返したので
同じような肋間の場所に、また「ドレーン」を入れるという繰り返しでした。
肋間神経痛のような感じになり、入院中は寝返りも打ちたくないくらい脇から胸にけての
アンダーバストのラインが痛みました。
何度も入退院を繰り返す中で、ベッドから起き上がれなくなり何日もシャワーにも入れず、
食事も寝ながらつまめるサンドイッチにしてもらった事もありました。
本当に思いだしたくないくらいの痛みでした。

退院しても腕があがりづらかったり、アンダーバストの痛みで背筋が伸ばせず姿勢はどんどん悪くなりました。
ワイヤー入りのブラジャーなど恐ろしくてつけられず、すべて捨てました。
ブラキャミですら、圧迫感があり痛かったのでノンワイヤーのゆるゆるのものを着用していました。
(ある程度良くなっても、ワイヤー入りが復活したのは今からほんの5〜6年前のことです。)
病院の主治医には神経痛のような痛みには、「マッサージを受けるか痛み止めを飲んでください」といわれました。

私は、すでにこの痛みには「鍼灸治療」だ!
とずっと考えていたので、再発を繰り返していた期間も退院して外出できる体調の時は
必ず鍼灸治療を受けに通いました。
なんといっても術創の疼痛がとても和らぎ、腕も動かしやすくなったからです。
横になって寝ても脇が痛かったのが、治療を受けると寝返りが打ちやすくなってうれしかったのを覚えています。
私の場合は、何度目かの退院のあとに急にぜんぜん腕が上がらなくなり、洗濯物を干せなくなったのですが
その時も鍼灸治療を受けて回復しました。
治療を受けた日は、痛みをかばって変な姿勢になっている背中や首も楽になり、良く眠れたのを覚えています。

この自身の経験から手術の傷に、私が行っている「積聚治療」という鍼灸治療が
とても有効だと実感したのです。
それ以来、来院しているたくさんの患者さんにこの話をしているので、ご紹介やご自身が手術を受けた時も
治療をさせて頂く機会が多くありました。
乳がんの方はもちろん、足首・腰・大腿骨・膝など転倒や交通事故による骨折の手術の傷、帝王切開の術創など
部位も様々です。

特に乳がんの傷の痛みで来院する患者さんは、症状や痛みの感じが自分が気胸の傷で体験したものと類似していて
つい必要以上に共感してしまいます...。あの神経痛のようなピリピリしたりする痛み、本当に辛いです。

手術の傷の痛み・不調に鍼灸治療が有効というのは、まだ世の中にぜんぜん浸透していないと思います。
でも実際に施術した患者さんたちは、可動域が広がったり痛みも緩んでいきます。

私は、たまたま鍼灸師だったので第一選択肢に鍼灸治療がありましたが
この術創の疼痛に悩んでいる方は、きっとたくさんいると思います。
術後の疼痛ケアに鍼灸治療も選択肢に入れる方が増えると良いなと思っています。

自分が治療を受けた経験や鍼灸師として治療をした経験を発信して、お役に立てると嬉しいなと思います。

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